会長挨拶

2022年度 若手連絡会長 川合 康太(三菱総合研究所)

2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災とそれに伴う福島第一原子力発電所の事故によって,原子力分野を取り巻く状況が大きく変化しています。事故からすでに 6 年以上経過しましたが依然として事故対策が継続しており,住民帰還や廃炉には着実かつ長期的な対応が求められています。また日本の原子力利用のあり方を再考し,様々な問題解決と原子力の将来の再構築に向けて専門分野を越えた連携が必要とされています。

日本原子力学会若手連絡会(JYGN)は,分野や組織を超えた「連携」を目的として活動しています。同じ時代を経験し,これから同じ世界を生きる同世代とのつながり,ネットワークは,日常の業務などでは得難いものです。私は JYGN の活動を通じて,国内に限らず,海外も含めた同世代の若手が連携することによって原子力が直面している課題の解決へと繋げていきたいと考えています。

設立趣旨

日本原子力学会若手連絡会(JYGN: Young Generation Network)は,1998 年に当時の若手世代が立ち上げた,「原子力若手技術者勉強会」を前身としています。

当時,原子力発電は,我が国の総発電量の約 3 分の 1 を占める重要なエネルギー源として利用される一方,核不拡散,使用済燃料や放射性廃棄物の管理,技術の維持・継承など,多くの課題が露呈しつつありました。また,繰り返されるトラブルにより原子力への不信感が増大し,原子力に「将来」や「魅力」を感じる若手も減少傾向にありました。こうした厳しい環境のなか,数十名の若手技術者・実務家・研究者などが集まり,自由かつ本音の議論を行うことを目指して,定期的に勉強会を開催することとなりました。

世界に目を向ければ,欧州やロシアにおいても,ほぼ時を同じくして原子力業界の若手組織が立ち上がり,2000年 9 月,IYNC(International Youth Nuclear Congress)第 1 回会合がスロバキアで開催されました。こうした国際的な動きと連携するなかで,我が国においても,上記勉強会のネットワーク機能のさらなる強化が必要であるとの認識に至りました。 以上のことから,今後の原子力を担ってゆく「若手」として,原子力全体の連携と活性化,そして,今後の新たな若手の育成のために,2001 年 3 月武蔵工業大学(当時)で開催された日本原子力学会春の年会の設立総会において,社団法人(当時)日本原子力学会の連絡会として正式に JYGN を発足し,活動をスタートさせました。

JYGN は設立以降,原子力を取り巻く情勢を踏まえ,その時々の若手世代が自発的に議論して,様々な活動を展開してきました。しかし,2011 年 3 月に発生した福島第一原子力発電所の事故は,原子力に深く携わってきた組織として,また今後原子力を引き受けていく若手として,活動の方向性に,また原子力技術に対する認識に,大きな見直しを迫るものとなりました。JYGN は現在,多様な立場や考え方を持つ若手が議論を重ねながら,今後の原子力を担う若手世代として目指すべき方向性を模索しつつ,様々な活動を国内外を問わず積極的に展開しています。

活動ビジョン

JYGN は,原子力に携わる若手世代間の連携を強めることで,若手が本来持つ活力を引き出し,その専門性や能力を高める活動を行っています。この活動を通し,原子力全体の活性化を図り,原子力技術の発展,原子力に関する諸問題の解決,そのために必要となる新たな若手の育成に貢献することを目的としています。原子力の専門性を活かし,国・機関を超えた若手の連携によって社会へ貢献すべく,ネットワークの拡充強化を図っていきます。

JYGN への参加資格は,会則により,原子力学会員かつ 39 歳以下の方を正会員としています。原子力の技術者,実務家,研究者など,原子力に何らかの形で関わっている,あるいは関わりを持ちたいと考えている若手の方を,JYGN は大歓迎いたします。また,JYGN の設立趣意に賛同される方ならば,年齢や所属にこだわらず,誰でも自由に情報を入手し,議論に参加できることとしています。

組織体制

JYGN は,一般社団法人日本原子力学会の連絡会規程(1003)に基づき設置された連絡会の一つであり,その運営は,原則として同学会若手連絡会規約(1003-03)にしたがって行われています。会長以下約 20 名で構成する運営小委員会のほか,主に国内活動を担当する企画小委員会,国際活動を担当する国際活動小委員会を設置し,自律的かつ柔軟な運営を行う組織体制を構築しています。

JYGN の運営費用は,主として,日本原子力学会からの予算により賄っています。また,セミナー等の企画を実施する際には,参加費を徴収し,その運営に充てています。